36.浸透固化処理工法技術マニュアル(2010年版)

 地震時に発生する液状化現象は、港湾、空港、道路等の土木施設や建築施設等に多大なる被害を与えます。特に、1995年に発生した兵庫県南部地震では、未曾有の被害をもたらしました。その結果、構造物の耐震基準が大きく見直されたため、新基準に適合しない構造物や液状化対策が実施されていない構造物が数多く残されています。このような背景の中、既設の構造物に影響をあたえず、施設を使用しながら液状化対策を施工することができる、新しい技術開発の要請が高まり、「浸透固化処理工法」が開発されました。
 「浸透固化処理工法」は、小型のボーリングマシンを使用して、構造物直下に注入管を建て込み浸透性のよい恒久型薬液を浸透注入し、地盤内の間隙水をゼリー状の固結物で置換することで地震時の過剰間隙水圧の発生を抑制する原理に基づいた液状化対策工法です。したがって、①既設構造物直下・周辺の施工が可能、②場所を選ばない施工性、・経済的な施工が可能、③高い耐久性と安全性、等の特長があり、沿岸域・都市部において広く利用することが可能です。
 一方、平成19年4月に改正された「港湾の施設の技術上の基準・同解説」(以下「技術基準」という)は設計手法や構造物の形状・材質といった手段を規定する仕様規定から、構造物に求められる性能のみを規定し、設計結果に至るプロセスを規定しない性能規定に移行しました。改正された「技術基準」では、従来の安全率法や許容応力度法に代えてレベル1信頼性設計法(部分係数法)を標準的な性能照査手法として提示しています。また、耐震性能照査に用いる地震動(レベル1地震動,レベル2地震動)については、従来の震度法に代えて工学的基盤における地震動の時刻歴波形を基に、表層地盤や構造物の地震応答特性を考慮して地震動による作用を算定する方法を用いることとなっています。
 「浸透固化処理工法」についても多くの施工実績に加え、2007年に石狩湾新港で実施された「実物大の空港施設を用いた液状化実験」より多くの技術的知見が得られました。このような背景から、財団法人 沿岸技術研究センターでは、これまでの本工法の研究から得られた多くの知見や最新の研究成果、および現地での施工実績をもとに新たなる検討を加え、沿岸技術ライブラリーNo.36として滑走路等の空港土木施設を対象とした設計について改めた「浸透固化処理工法技術マニュアル(2010年度版)」を発刊することとなりました。
浸透固化処理工法の設計・施工に携わる技術者の方々にとって、この工法の適用にあたり、本マニュアルが有効に活用されるものと確信しております。
 最後に本マニュアルをまとめるにあたり、熱心にご討議・検討していただきました「浸透固化処理工法(2010年度版)技術検討委員会」の皆様に心よりお礼申し上げます。

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絶版 平成 22 年6月発刊 A4 / 172ページ  6,292円 (税込)
(本体5,720円+消費税572円)
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